道ならぬ恋(パイドラー)
パイドラーはクレータ王ミノースの娘で、アリアドネーの妹。アテーナイの王テーセウスの妃になったが、義理の息子に恋をしてしまった。息子とはテーセウスがかつてアマゾーンの女王ヒッポリュテーに生ませた子のヒッポリュトスである。彼は純潔を貴び、処女神アルテミスに誓いをたてて、女性との性愛をいみ嫌っていた。ところが、男女の愛を司る愛の女神アプロディーテー(ヴィーナス)にとっては、自分の職分を侮辱されたことになる。そこで彼に復讐を計り、パイドラーはその餌食にされたのである。パイドラーは、彼の住む地に行ったおり初めて会って一目で恋に落ちてしまったが、女嫌いの義理の息子への恋が、旨くいくはずもなく彼女の想いは募るばかり。とうとう耐えかねて彼に胸の内を打ち明けたが、にべもない返事で逆にののしられてしまった。彼女はそんなつれない仕打ちを恨み、その腹いせに息子に言い寄られ、辱めをうけたと夫宛に嘘の遺書を残して自害した。テーセウスは息子を国外に追放した。後に真相を知るがすでに息子は帰らぬ人となっていた。この作品は、道ならぬ恋に苦悩する様と、女の愛に賭けた深い情念を表現している。
Copyright 1999 Masasuke Chiba
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