愛ゆえの過ち(クリューティエー)
クリューティエーはティターン神族のオケアノス(大洋神)とテーテュス(海の女神)の娘で、太陽神アポローンに愛されていた。(本来太陽神はヘーリオスだが、後代になってアポローンと混同され、太陽神にかかわる神話ではアポローンが登場する場合がある。)しかし、アポローンはバビュローン王オルカモスの娘のレウコトエーの父親に告げ口をした。厳格な父親は娘のふしだらさを怒り、娘を生き埋めにしてしまった。アポローンはそれを知り駆けつけたが、娘はすでに息絶えていた。アポローンはレウコトエーを哀れんで、その体にネクタル(神酒)を注ぐと、娘の体は芳香を放つかんらんの木になった。それ以後アポローンはクリューティエーをうとましく思い、二度とかえりみなくなった。彼女は深く悲しみ、毎日天道を駆ける太陽神を見つめ続け、いつの間にか体は大地に根がはり、薄紫の花をつけるヘリオトロープ(ヘリオスの方を向く者)になった。(一説ではひまわりとも言われている。)花になっても太陽を想い、顔を向け続けている。この作品は、愛ゆえの愚かさと、悲しくもはかない女の性を表現している。
Copyright 1999 Masasuke Chiba
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