泉の幻想(ナルキッソス)
ナルキッソスはケーピソス河神とニンフ(妖精)のレイリオペーの子で、美少年であった。彼が生まれた時、予言者からこの子は自分を見ることがなければ、長生きするだろうと言われていた。その子は美しく成長して、多くの乙女やニンフ、青年達からも言い寄られたが、彼はいくぶん冷ややかで高慢なところがあり、ことごとく拒んできた。その中の一人の若者が、冷たくあしらわれた腹いせに、彼もいつかは恋をして、その相手からは決して返事がもらえないようにと、神に願い自害した。ナルキッソスはある日、森の泉に映った自分の姿の美しさに、夢中になってしまった。そして水に映った恋人に愛を語りかけるのだが、返事はなく来る日も来る日も、虚しく不毛の愛は続いた。やがてナルキッソスは心を痛め、痩せ衰え泉のほとりで息絶えてしまった。そこには彼の姿はなく、可憐な水仙の花(ナルキッソス)が咲いていた。その花はいつも頭をかしげて、水面に映る自分の姿にみとれているのである。ナルキッソスは「水仙」の意。ナルシスト(自己愛、うぬぼれ)はこの話から出ている。この作品は、いくら求め、恋い焦がれても応えることのない、水に映った恋人に語りかけるナルキッソスの虚しくも切なく美しい状況を表現しています。
Copyright 1999 Masasuke Chiba
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