乙女座(8/23〜9/29)
〜豊かなれ大地(デーメーテール)〜
春から初夏にかけて獅子座と天秤座の間に位置する乙女座は、Y字をかたどり、一等星スピーカが乙女の純潔さを主張するかのように、優美な白色の光りを放ちます。スピーカは星座の絵図で、乙女の持つ麦の穂の部分にあり、その名も麦の穂を意味します。
神話の中で乙女座については三つの説があり、天秤座で正義を司る女神アストライアが天界へ戻り星になったという説が一つ。そして大犬座にまつわる物語があります。酒の神ディオニュソスの愛した娘エリゴネは父の死を嘆いて自らの命を絶ち、その愛犬マイラはいつまでも二人のそばを離れず、ついには餓死してしまいます。哀れに思ったディオニュソスはエリゴネとマイラを天に上げ、それぞれ乙女座、大犬座としておいたのでした。しかし、星座の絵図には麦の穂を両手に持つ乙女が描かれていることから、豊穣の女神デメテルともいわれているのです。愛娘ペルセポネを冥界の王ハデスにさらわれますが、大神ゼウスの取り成しで、冥界の食べ物を口にしていないのならば、と言う条件のもとに取り戻せることになりました。冥界からの帰り際、ハデス王から渡されたザクロを4粒食べてしまったペルセポネは地上で暮らすことは許されぬ身となりました。ハデス王の策にまんまとはめられた事を知ったデメテルの怒りと悲しみは地上の草花や木を枯らし、寒い冬をもたらしました。食べ物は実らず、飢えに苦しむ動物や人間達を見てゼウスは放っておけぬとハデス王を説き伏せて、口にした4粒の実の分だけ、つまり4ヶ月間はペルセポネは妃として冥界で過ごし、残り8ヶ月は母デメテルのもとで過ごせるようにとしたのです。春の訪れは娘と暮らせるデメテルの喜びの表れで、このようにして四季ができたともいわれております。そのデメテルが天に昇った姿が乙女座なのです。
Copyright 1999 Masasuke Chiba
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