【アステリアー】
乙女座とさそり座にはさまれた位置にある天秤座は初夏の頃から初秋にかけて見ることができます。紀元前では秋分に太陽がこの星座のなかにあったことから秋分点として、農作物の刈り入れ時期を知らせる大切な星だったのです。この天秤座は女神アステリアーが人間の犯した罪の重さを計るためのものといわれています。
世界が黄金時代であったとき、神々も下界で人間達と共に暮らしていたのです。季節は穏やかな春のみで、農作をせずとも食べ物は手に入り、酒の流れる川もあり、ただ日々穏やかに過ごしておりました。ところが銀時代になり、季節が春夏秋冬に分けられたことから、まず暑さ、寒さをしのぐためにそれぞれに住み家を造り、そして食べ物は冬にそなえて蓄えておくようになりました。誰のものでもなかった地が分けられ、支配をするもの、される者とに分かれてしまったのです。「人よりももっと・・・」の欲望が争いを巻き起こすことになり、共存していくことに嫌気のさした神々は天界へ上がってしまいますが、ただ一人正義を司る女神アステリアーだけは、放ってはおけぬと残ったのでした。銅時代に入り、人間の欲と野望は深まるばかりでした。多くの命をかけて国と国がぶつかり合い、仲の良かった友人同士や血を分けた親兄弟までもが、互いの命を奪い合うために戦うのです。裏切り、奪い、血を流し憎しみ合うおろかな人間の心を諭す術はないとアステリアーもついにあきらめ天へと戻ってしまうのでした。女神の手により、星座である天秤にかけられた罪の重さの分だけ、戒めの天罰は下るのでしょう。