【セレネー&エンディミュオン】
あの夜、羊飼いの私エンディミュオンは昼の仕事の疲れもあり、山の洞窟の干し草の寝床の中でぐっすり眠っていました。夢だったのでしょうか、銀色の光が降り注ぎ、幻のような影が私に寄り添い、甘い声でささやきました。「あなたはなんて美しいの。わたしはあなたが好きになってしまいました」と言って口づけをしたのです。私は銀色の光に包まれ、また深い眠りに落ちてゆきました。後になってあの方が月の女神セレネさまだと知りました。女神さまは私が常々老いたくないと願っていたのを知っておいでになり、私に「不老不死」のかわりに「永遠の眠り」をお授けになったのです。私はそれからずっと眠り続けているのです。夜になると、月の女神セレネさまが銀色の光に包まれながら天上から舞い降りてきて、眠りつづける私に恋物語を語ってくださるのです。